Example

事例紹介

case 01

Q

会社から指示していないのに、ダラダラ残って残業する従業員がいます。早く帰るように何度も言っているのですが、言う事を聞かず勝手に遅くまで残業して、遅い時間にタイムカードを打刻しています。こんな従業員にも残業代を払わないといけませんか?

A

時間外労働は会社の命令があってはじめて時間外に労働する義務が生じるもので、従業員の勝手な判断でするものではありません。時間外労働を許可制にして、時間外労働をする必要がある場合に、事前に上長に許可を得た場合にのみ残業代を支給することが可能です。

ただし、従業員が許可を得ずに時間外労働を行っていることを会社が認識しながら、これを止めなかった場合は黙示の時間外労働命令があったと判断されることがありますので、無許可の時間外労働は禁止するように徹底してください。

case 02

Q

仕事中に何度もトイレに行く従業員がいます。しかも一度トイレに行くと10分以上戻ってきません。その時間分の給料をカットできますか?

A

トイレに行く時間をカットするのは難しいですが、仕事をサボるためにトイレに行っているのであれば、職務専念義務違反となり、懲戒の対象となります。

一方、体調不良などが理由であれば懲戒の対象とすることは難しいです。

トイレに行く理由を正確に調査したうえで、職務専念義務違反が認められた場合は、勤務時間中は職務に専念するよう口頭で注意をしたうえで記録を残しておきます。何度か口頭で注意しても改善が見られない場合は、文書で注意を行い、それでも改善が見られない時は、けん責処分等の軽めの懲戒処分を行うことになります。

case 03

Q

交通事故で会社の車を壊した従業員に修理代の全額を請求できますか?

A

仕事をする上で通常発生することが予想されるミスによる損害について従業員に対し損害賠償をした場合、過去の裁判例では、損害額の全額の賠償ではなく、損害額の一部(5%~25%)の賠償しか認められておりません。飲酒運転など従業員の過失の程度が著しい場合などをのぞき、単なる過失にとどまる場合は、全額の請求が認められるのは難しいです。

case 04

Q

従業員がSNSに悪ふざけ写真を投稿したところ、ネット上で炎上し、店舗名が特定され、店を閉めることになった場合、従業員を懲戒解雇することはできますか?

A

懲戒解雇とするには、就業規則の懲戒解雇事由に該当していることが必要です。懲戒解雇事由にSNSの利用について定めていれば懲戒解雇できるのですが、そうでない場合でも懲戒解雇事由に会社の名誉や信用を損なう行為をした場合等の定めがあれば、これを根拠に懲戒解雇できる可能性もあります。

ただし、懲戒解雇が有効と認められるには、就業規則の懲戒解雇事由に該当しているだけでなく、処分の合理性、相当性も要求されます。今回のケースは、かなり悪質ですので、懲戒解雇は有効と認められる可能性は高いです。

case 05

Q

正社員として採用したが、ミスが多く、試用期間3か月の満了で辞めてもらっても、大丈夫ですか?

A

試用期間中であれば、簡単に辞めさせることが出来ると勘違いしている人が多いですが、たとえ試用期間中であっても、雇い入れた日から14日を経過すると、解雇予告手当制度が適用されます。3か月の満了で辞めていただくとのことですが、期間満了では無く、解雇に該当しますし、14日を超えてますので、解雇予告手当制度が適用されます。1か月分の解雇予告手当を支払うか、1か月前に解雇を予告する必要があります。併用も可能です。

ただし、解雇予告手当制度と解雇が有効か無効かは別問題です。解雇するには合理的理由がなければなりません。ミスが多いというだけでは、合理的理由に該当せず、解雇無効と判断される可能性が高いです。

case 06

Q

年俸制にすれば残業代は支払わなくても良いですか?

A

年俸制を採用すれば、残業代を支払う必要はないと勘違いしている人が多いですが、年俸制であっても、残業代の支払い義務は生じてきます。

case 07

Q

弊社は30時間分の固定残業代を採用していますが、残業時間が少ない月もあり、もったいない気がします。不足分を次月に繰り越すことは可能ですか?

A

固定残業代は、残業代があらかじめ定められている賃金体系のことをいいます。例えば基本給は23万円、固定残業代5万円(30時間分)と定めて残業代を固定することを固定残業代といいます。

固定残業代として支払う金額が30万円と定めているのであれば、たとえその月の残業時間が30時間より少なくても、固定残業手当を減額することはできず、不足分を翌月に繰り越すことはできません。

case 08

Q

これまで毎年ボーナスを基本給の1か月分を年2回支給してきましたが、業績不振により、支給することが難しいです。例年どおりの額を支給しないと問題ありますか?

A

法律上会社はボーナスを支給する義務はありません。支給基準は会社が独自に定めることになりますので、就業規則等に会社業績により不支給の場合あり等の記載があれば、業績不振により支給しなくても問題ありません。

ただし、就業規則等で、賞与額を基本給の2か月分などと定めている場合は、支給する義務が生じてきます。

case 09

Q

休日出勤した時は、代わりに代休を取ってもらっています。この場合、休日出勤には該当しないので、割増賃金は支払わなくても良いですか?

A

代休は、休日出勤をした後に、その休日出勤の代償として他の日を休日とするものです。しかし、法定休日に出勤したときには割増賃金を支払わなければなりません。別の日に休日を設けたとしてもその休日出勤をした際の割増賃金の支払いは必要となってきます。その場合は、1日分の賃金の0.35倍の賃金を支払う必要があります。

代休と似た制度で振替休日というのがあります。振替休日は、あらかじめ休日と労働日を振り返ることで、休日に労働させることにならない仕組みです。したがって割増賃金を支払う必要がなくなります。

振替休日を採用する場合は、就業規則等にその旨を記載しなければなりません。

case 10

Q

飲食店を経営していますが、お客さんが少ない日はシフトで組んでいた時間よりも早く帰ってもらっています。給料は実際に働いた時間分を支払えば大丈夫ですよね?

A

やってもらう仕事が無いという理由で帰らせては、従業員は生活に困ってしまいます。帰らせた原因は会社にあるので、その分の賃金は支払わなければなりません。
会社は平均賃金(直近3か月の総支給額÷直近3か月の暦日)の100分の60以上の額を支払う義務が生じます。

case 11

Q

体調不良などの理由で、当日の朝に有給休暇を申し出てくる従業員がいます。認めないといけませんか?

A

有給休暇は事前申請が原則ですので、当日朝の急な申請や事後申請での有給休暇を認めるかどうかは、会社側の自由な判断によります。

一般的には有給休暇の事後申請を一律に禁止するのではなく、急病や、大雪などで会社に事前に連絡できないようなやむをえない理由がある場合のみ、事後申請を認めるという対応を取っている会社が多いです。

case 12

Q

退職時に有給休暇が残っている従業員が、有給休暇を買い取って欲しいと頼んできました。会社は買い取る義務があるのでしょうか?

A

会社が有給休暇を買い取ることは原則として禁止されていますが、退職時に残った有給休暇は例外として、買い取ることが認められています。ただし、買い取る義務はありませんので、どう対処するかは会社の自由となります。

また、買取金額についても、法律で定められておりませんので、会社が就業規則などで定めることになります。基本的には有給休暇を取得した時の手当と同額であるべきと考えられますが、買取金額が平均賃金に対して著しく低い場合でも、違法ではありません。

case 13

Q

従業員10人の会社で労災が発生しました。労災を使うと保険料が高くなると聞いたのですが本当ですか?

A

労災保険料のメリット制という制度の要件を満たしている会社は、労災を使うと保険料が高くなる場合があります。要件は継続事業(一般の事業)と有期事業(建設業など)で異なっております。

 

・継続事業(一般の事業)の場合、次のいずれか
① 100人以上の労働者を使用する事業
② 20人以上100人未満の労働者を使用し災害度係数が0.4以上の事業

 

・有期事業(建設業)の場合、次のいずれか
① 確定保険料が100万円以上
② 請負金額が1億2000万円以上

 

したがって、従業員数20人未満の一般の事業であれば、要件に該当しませんので、労災を使っても保険料が高くなるということはありませんので、ご安心ください。

case 14

Q

弊社はフルタイム勤務の社員が40人で、残りは週30時間未満のパートタイマーが80人で、合計120人です。2022年10月から労働者数101人以上の会社は、短時間労働者も社会保険に加入しないと聞きましたが本当ですか?

A

2022年10月から従業員数101人以上(2024年10月からは従業員数51人以上)の企業は社会保険の加入条件が変わりますが、この従業員数は「フルタイムの従業員数」+「週労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員数」とされておりますので、御社の場合は、従業員数40人とカウントされ、該当しませんので、ご安心ください。

 

なお、新たな加入対象者は下記のとおりです。

・週の所定労働時間が20時間以上

・月額賃金(通勤費や残業代を除く)が8.8万円以上

・2か月を超える雇用の見込みがある

・学生ではない

case 15

Q

従業員の家族が新型コロナウイルス陽性になり、従業員は濃厚接触者に該当し保健所からの就業制限が出ています。この場合従業員のお給料はどうしたら良いでしょうか?

A

使用者の責に帰すべき事由で従業員を休業させた場合は、休業手当を支払う義務がありますが、今回のケースは保健所からの就業制限が出ていますので、使用者の責に帰すべき事由に該当しませんので、休業手当の支払い義務はありません。

ただし、厚生労働省は雇用維持の観点から従業員に休業手当を支払って、雇用調整助成金を請求することが望ましいとしております。

雇用調整助成金の支給要件を満たす場合は、休業手当を支払って雇用調整助成金を請求し、支給要件を満たさない場合は、休業手当を支給せず、従業員が休業支援金を請求されたらいかがでしょうか。

ちなみに、従業員が有給休暇を希望した場合は、有給休暇を使っていただいて問題ありません。